第6回P-drugワークショップ感想記

大分大学医学部薬効薬物治療応用講座 臨床薬理学 森本卓哉

 クリスマス間近の2003年12月20(土)〜21日(日)に岡山の川崎医科大学で行われた、第6回P-drug ワークショップに参加させていただきました。薬の処方に関して、有効性や安全性のほかに、経済性を考慮することを含めてさまざまな角度から大変勉強になりました。特にロールプレイングで薬剤師さんやMRさんと一緒に処方を考えるという経験は初めてのことであり、楽しかったと同時に「なぜこの薬を処方するのか」という説明責任を果たすことの重要性を改めて感じました。

 私は現在、大学院で薬の研究や臨床試験を行って、エビデンスをつくる部署に所属していますが、これまで9年間の処方行動を振り返ってみると、まずは指導医や先輩医の処方を見て治療経験を重ねるということがベースになっていました。特にまだ処方経験がない薬に関しては、エビデンスに関する海外の最新文献にすぐに飛びつくことはなるべく避け、身近な専門医の助言や国内の高名な先生方が書いた総説や処方例を参考にすることがほとんどだったと思います。P-drugは、有効性・安全性・経済性について自分でスコアをつけることによって、自分の知識を再確認できるという意味で自己学習として大変優れた方法と感じました。

 また、P-drug は、新たな工夫を自分で取り入れることのできる発展性のある方法だとも思いました。今回のワークショップで習った手順に加えて、自分なりに考えてみたいと思ったことが3つあります。

 (1)処方を止める目安を書いておく。症状が改善した場合と改善しない場合の2つを書いておくことで、睡眠薬などを漫然と投与することが防げるのでは。また止め方(漸減法)や代替薬への変更なども明記しておく。

 (2)P-drugでもEBMが大きな役割を果たすが、EBMを考える上での問題の一つに「Conflict of interest」があり、このことについての具体的な指針は今のところない。せめて、スコアを付ける際に参考にした論文のConflict of interestは明記しておくべき。また、新しい治療法や薬が登場する際の「熱狂期」にも注意する。

 (3)EBMでは、「権威者の意見」は一番低い価値としてランク付けされているが、治療経験を持つ医師の意見は、別の次元で尊重するべきだと思う。P-drugに関しても、処方経験があることがかえって、スコアをつけることに難渋する(例えば、実際に投薬してみるとそんなに違わないと思う、、、など。)ことがある気がする。ランク付けの後、自分の感覚と違う場合にはその旨を欄外に付記し、他の医師の意見を聞くなどした方が良いと思う。

 今回のワークショップをきっかけにして、これから自分なりの処方集を少しずつ整備して、次回もぜひ参加させていただきたいと思います。

 最後になりましたが、ファシリテーターを務められた昭和大学の内田英二先生、東京大学の津谷喜一郎先生、富山医科薬科大学の川上純一先生、相生会大崎クリニックの角南由紀子先生をはじめ、今回のワークショップを企画された川崎医科大学総合診療部の中泉博幹先生に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

(追伸) 岡山のきび団子のお土産は、職場にとても好評でした!


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